今、知っておくべき事 その2

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焚書坑儒(ふんしょこうじゅ)という言葉をご存知でしょうか?
秦(しん)の始皇帝が、支那地方全土を平定した後、昔から伝わる文献を焼き払い、儒学者を生き埋めにした言う故事があります。
焚書坑儒はこの故事から成語された言葉です。
この事から支配者が自分に都合の悪い過去の文献を焼く事を焚書と言います。
そして、自分の考えに反対する知識人の口を封じてしまう事を坑儒と言います。
この焚書坑儒にならって、中国では文化大革命が行われました。

神話の時代、ユーラシア大陸の支那(しな)地方には、夏(か)と言われる大国があったと言われています。
その後、夏を滅ぼし、殷(いん)と言う国ができました。
さらに、殷は周(しゅう)と言う国に滅ぼされます。
この周と言う国の時代までは、あくまで大国であり、支那地方全土が平定される事はありませんでした。

やがて、周の求心力が弱まり、支那地方全土の小国が覇権を争う戦乱の時代になります。
これが春秋戦国時代と呼ばれる時代です。
この春秋戦国時代を勝ち抜き、歴史上、初めて支那地方全土を平定したのが秦です。
そして、秦の大王の?政(えいせい)は始皇帝を名乗ります。

支那地方とは、現在の中華人民共和国(中国)のある場所です。
支那という言葉は、秦の時代に使われ始めたと言われています。
支那がチャイナの語源との説もあります。
支那やチャイナは地方の呼び名であり、中国とは、現在の中華人民共和国の略称です。
夏、殷、周、秦、漢、魏、呉、蜀、晋、南北朝、隋、唐、五代、宋、元、明、清、中華民国、中華人民共和国と歴代の国家があります。
これらは全て支那地方に存在した国家です。
中国共産党は、これら過去の国家を、中華人民共和国の過去の呼び名であったかのように扱うよう世界各国に働きかけました。

それにまんまと乗ったのが日本です。
それ以外の国は未だに、支那やチャイナと呼び、国名と地方名を分けて扱っています。
日本だけが支那地方と言う呼び名を、差別用語ように扱い、何となく使い難い言葉としています。
このように中国共産党は、過去の歴史を都合の良いように書き換える事を得意としています。
そして、日本はそのプロパガンダにまんまと乗るのを得意としています。

それもこれも、秦の始皇帝が焚書坑儒を良しとし、都合よく歴史を書き換えた事に端を発している事になっています。

しかし、近年の研究で、秦の始皇帝の焚書坑儒の本当の意味が分かってきました。
その裏に隠れた非常に崇高な政治思想も理解されるようになってきました。
漢(かん)の時代に司馬遷(しばせん)と言う歴史家が記した「史記(しき)」と言う歴史書があります。
漢は、秦の次に成立した王朝です。

この史記には、支那地方の歴史が克明に記されています。
しかし、その量は膨大なため長い間、正確に読み解くことがされていませんでした。
そこには始皇帝の時代の歴史も記されていますが、これも近代になるまで正確に読み解かれる事はありませんでした。
そのため、史記にある断片的な情報を繋ぎ合わせて作られて物語が、まるで史実のように伝わっていました。
焚書坑儒の故事もその一つです。

始皇帝が古い文献を焼き払うように命じたのは事実です。
しかし、最近の研究によると、それは全国民に対してではなく、公職についている者に対しての命令です。
なぜなら秦の時代には、古い文献に見せかけた偽物の文献が沢山の出回っていたのです。
春秋戦国時代から秦王朝にかけての時代、筆が発明され文字が手軽に書けるようになりました。
始皇帝の配下の武将の蒙恬(もうてん)は、筆をより使いやすく改良して蒙恬筆を作り出したとして有名です。

それまでは、文字は書くものではなく、彫るものでした。
竹簡(ちくかん)と言われる竹の巻物に彫っていました。
筆の発明により、文字が彫るものから、書くものへと進化し、手軽に書物が作れるようになりました。
これによって、秦の時代には偽物の文献が大量に出回っていました。

これを焼き払えと命令したのが、焚書です。

春秋戦国時代には、筆以外にもう一つ大きな歴史的転換がありました。
それが、儒教の成立です。
儒教とは礼節を重んじ、人は皆、君子(志の高い人)を目指すべきだと言う教えです。
当時の知識人は挙ってこの儒教を学びました。
儒教は崇高な教えであり、現代も多くの人が儒教の教えを記した論語を学んでいます。
僕のカバンにも、ポケット論語が入っています。

ところが、先ほどの筆によって偽物の文献が作られる事と相まって、儒教を語る偽物の文献も沢山出回りました。
その偽物の文献を読んだ、にわか儒学者も多数現れて、人心を惑わしたそうです。
公職に就くものの中にも、にわか儒学者を気取る人が多くいたそうです。

彼らを罰したのが坑儒です。

つまり、焚書坑儒とは、公職にあるものに対する偽物の文献と、にわか儒学者の取り締まりの事なのです。
これを非常に重罪とし、死罪になった者もいます。
ただし、通常の死罪であれば、遺体は野晒しにされます。
しかし、この時は埋葬を許可されたそうです。

死罪の罪人の埋葬が許可される事は、それまではあり得なかった処置だったそうです。
後の人がこれを間違って解釈した結果、生き埋めにした事になったしまったそうです。

始皇帝の側近には、高名な儒学者もおり儒教の教えに対しては非常に寛容だったと言うことも分かってきたそうです。
ただし、儒教は、性善説を前提にした教えです。
性善説とは、人は皆、根本は善であり、向上心を持って生きていると言う考え方です。
これに対しては、性悪説と言う考え方があります。
人は皆、放っておくと悪いことや、だらける事を考え始めると言うものです。

儒教を学んだ後、性善説に疑問を持ち、性悪説を唱えたのが荀子(じゅんし)です。
荀子の流れを汲む、韓非子(かんぴし)が儒学ではなく、法学を唱えました。
法によって、人を正しい方向へ導くべきと言う考え方です。
始皇帝の側近には、儒学者だけでなく、この法学者も多くいました。

始皇帝の政治には、この法学の教えが色濃く出ています。
そのため、始皇帝は儒学嫌いで、法学びいきだと思われていました。
それが焚書坑儒の間違ったイメージをより強く印象付ける結果に繋がっていました。

しかし、これも史記の研究から間違っていた事がわかりました。
ある宴会の場で、始皇帝に向かって側近の儒学者が意見を言ったそうです。
「始皇帝の政治は法学の色が強すぎる、もっと、儒教的な考えを持つべきだ」
その意見に対して、始皇帝はもっと詳しく話してくれといったと言う記録があるそうです。

始皇帝は、政治上、法学的な考え方は止むなしとしていたようですが、儒教の教えにも敬意を払っていたようです。
また、始皇帝は、焚書と同時に、本当に役に立つと判断される書物の保護もしたそうです。
信頼のおける学者に、文献を調査させ、偽物でないと判定されたものを残そうとしました。

史記は漢の時代に書かれたものですが、司馬遷は漢王朝に媚へつらうような内容は記しませんでした。
漢を含む過去の王朝の良いところも、悪いところも分け隔てなく記したそうです。
漢王朝に媚びへつらう内容を書かなかった事から、当時の漢の皇帝の武帝に重い罰を受け、牢獄に繋がれました。
それでも、史記を記し続けたそうです。
それだけに、高い信用度があります。

この焚書坑儒の事を考えるに当たって、現代と通ずるものを感じます。
筆の発明ではなく、インターネットの発明で、文字は書くものではなく、発信するものになりました。
始皇帝の時代とは比べものにならないほどの速度で、文字情報は世界中を駆け巡ります。
当然ながらフェイクニュースも、沢山あります。
さらに、そのフェイクニュースを真に受けたフェイク情報通の人も沢山います。

僕のメルマガやセミナーの資料は、実際に作成する時間はそれほど長くありません。
しかし、裏取りの時間が膨大です。
本当に間違いはないか?
どこかでフェイクを?まされていないか?
これらを調べるのに多くの時間を割いています。
秦の始皇帝が、正しい情報の選択に苦心したのも頷けます。

現在、多くの人がインターネットの情報で右往左往しています。
ある者は、注目を集めるために常軌を逸した動画を配信し
ある者は、社会正義の衣を着て全く罪のない人を糾弾し
ある者は、何の悪気もなくフェイクニュースを拡散し
何が本当で、何が嘘か、分からない時代になりました。

諸外国では小学校で、インターネットで得た情報を精査する方法を教えています。
しかし、日本では未だ小学生ではなく、大の大人がニュース記事にコメントを書き込み、炎上騒ぎを起こしています。
インターネットの情報を鵜呑みにして、右往左往しない事。
日本でもこの意識を根付かせなければならないと思います。

最後に、始皇帝のお話をもう少しだけお伝えします。
一昔前であれば、秦の始皇帝は暴君であり、民心の反感を買って王朝は短命だったと習いました。
しかし、最近の研究では、それとは違った始皇帝の顔が浮かんできました。
最近の研究を元に、始皇帝をモチーフにした漫画もあります。
この漫画も大ヒットしており、数年後には始皇帝のイメージは全く変わってしまっているかもしれませんね。

この漫画は、アニメ化もされています。
Huluで今月末まで放映しています。
興味のあるからは、アニメを見てみるのも良いかもしれません。
始皇帝のイメージが全く変わります。

さらにもうすぐ実写映画も公開されます。
僕は、これも見に行こうと思っています。

アニメ(Hulu)
www.happyon.jp/kingdom-2012

実写映画予告サイト
kingdom-the-movie.jp/sp/

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