日本が負ける理由

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最近「日本の底力はまだまだこんなものではない」と言う講演をされる先生が増えてきました。
日本人は世界有数の頭脳を持ち、勤勉なので、本気になれば世界の産業をリードできる。
高度成長の頃のように世界中から一目置かれる国として返り咲ける。
そう言ったポジティブな内容が好まれているようです。

残念ながら私は、このままでは日本は負け続けると思っています。
私も、日本で生まれ育った者として日本が一目置かれる存在になって欲しいと思っています。
しかし、このままではきっと無理でしょう。

世界有数の頭脳と勤勉さがあれば成功できると思っているのが既に救い難い話です。

今や世界中のスマホは、AndroidスマホかiPhoneしかありません。
OSを供給しているグーグルとアップルはどちらも米国企業です。
世界シェアの95%以上を、たった2社が背負っているのです。
では、グーグルやアップルのOSは、世界有数の頭脳と勤勉さから産まれたのでしょうか?

答えはノーです。
グーグルやアップルのOSが提供しているものは、全体が体系化された便利さです。
全体が体系化されたものをプラットフォームやプラットホームと呼んでいます。
この便利さは、世界有数の頭脳や勤勉さがなくても提供できるものです。
世界中でスマホが一気に普及した理由は、プラットフォームによる便利さが理由です。

これに対して日本独自の進化を遂げた携帯電話をガラケーと言います。
ガラケーこそ、世界有数の頭脳と勤勉さがなければ作れない機械です。
現在、販売されているスマホなど、日本で過去に販売されてきたガラケーと比べれば大雑把な商品です。
ガラケーの方が明らかに完成度が上です。
しかし、世界の人々はガラケーを誰も認めてくれはしませんでした。
結果として、日本のガラケーは姿を消してしまいました。

ガラケーには、体系化された便利さがなかったのです。
ガラケーは、パソコンに送られてきたメールを受信することができませんでした。
パソコンのメールをガラケーに転送設定しても、迷惑メールフィルタで届かないことも多々ありました。

反対にスマホは、パソコンに送られてきたメールも簡単に確認することができます。
それ以外にもスマホは、あらゆる面でパソコンやタブレットや音楽プレーヤーと簡単に連動させられます。
今ではテレビなど、あらゆる家電と連動するようになり始めています。

ガラケーはスマホとは全く反対の進化の道を進みました。
パソコンとも、音楽プレーヤーとも、テレビとも、切り離すことを目指しました。
他の機械と連動するのではなく、他の機械の機能を詰め込むことばかりに集中しました。
ガラケーさえあれば、音楽が聴けて、テレビも見られる事を目指したのです。
日本人の頭脳と技術力をもってすれば、それができてしまいます。

その結果、音楽プレーヤーもテレビもガラケーのライバルでした。
連動して全てを巻き込みのではなく、全ての美味しいとこ取りをして、全てを敵に回した。
それが日本のガラケーです。

全てのものをガラケー1台に詰め込むと一見便利そうですが、複数を同時に利用することができなくなります。
結果的にスマホのように、全てを有機的に連動させる方がはるかに便利だった訳です。

ソニーには音楽プレーヤーのウォークマンがあります。
しかし、ソニーには、これを便利に使うためのパソコンがありません。
ソニーのパソコンブランドだったVAIOは、売却されてしまったからです。

また、ソニーのウォークマンでは録画したテレビ番組を見る機能があります。
でも、なぜかソニーのゲーム機のプレイステーションで録画したものに限られています。
ソニーは、たくさんの録画デッキを販売しているます。
でも、それらで録画してもウォークマンで視聴することはできません。

世界が求めているのは、体系化された便利さなのに、連動に複雑な条件を設けて、体系化と逆の方向に進んで来たのです。

同一社内でも、これほどちぐはぐで、体系化されていないと言うのが日本の企業の実態です。
技術的に難しいことは何もないはずです。
ただ、同一社内での利権争いと関係各社へのしがらみが邪魔をしているのでしょう。
これらの問題をクリアしなければ、世界有数の頭脳と勤勉さは宝の持ち腐れになってしまいます。
と言うより、すでに持ち腐れになっています。

このトンネルを抜けださないことには、残念ながら日本は負け続けることになるでしょう。
ただ、こういった危機を日本は過去に何度も乗り越えてきました。
その最大のものがVHSを、世界の家庭用ビデオのプラットフォームに押し上げたことです。
早くトンネルを抜けだして、世界に誇れる日本独自のプラットフォームが登場する事を期待しています。

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